バルチック艦隊技術将校,ポリトゥスキーの日記

11月27日朝11時

今日はすでにアリョールアレキサンドルの両戦闘艦を訪ねた。2時ごろにナヒモフボロジノメテオルなどに行かなければならなくなった。いずれも故障したり浸水したとのことである。
アレキサンドルの艦内に,ダカールから偶然のことで一人の黒人を連れてきており,この黒人を当地に上陸させた。その黒人によれば,この地の黒人は死人の肉を食するという。これは家畜類に乏しく,獣肉が高価なためだとのことである。死人の肉を食べる前に,その死体の手足を切り取って数日のあいだ沼地などに放置し,それが腫脹するのを待ってから食べるのだそうである。そうすることによって人肉が柔らかくなるという。
この地の海水には潜水夫が入ることができない。鮫がたくさんいるからである。
当地の県知事から進物として野菜果物が贈られた。朝飯にはマンゴー,アナナス,バナナ,その他の珍しい果物が私たちの食膳に上った。そのなかでもとくにうまかったのがアナナスである。
知事がたくさんくれた果物の中には,だれもまったく名前を知らず――それが野菜なのか果物なのかの見分けがつかないものがあったのは少しおかしかった。
一隻の運送船はハンブルグからの私信電報を受け取った。クロパトキンが日本軍を海岸に撃退圧迫したということであった。はなはだ愉快な話ではあるが信じがたい。
夜11時,上陸した人たちの話では,この土地は非常に植物が多く,植物園のようで,また動物もたいへん多いという。私たちの軍艦に非常に大きな蝶が飛んできたのだが,その大きさはウソかと思うほどであって,実に一尺五寸もあった。フランス人は,海岸で二丈ぐらいの死んだ大蛇を見せていた。
我が士官たちはこの土地の王を訪問したが,王は昼寝の最中であった。しかし遠慮もせずに彼を起し,その妻にも面会した。王もその臣下同様の黒人である。

面白いことがあった。先にも記したように,知事が私たちに進物を贈ってきたが,この中の野菜を持ってきた官吏に,お礼として心ばかりに一,二の銀貨を与えたところ彼はこれを受け取った。その後,その金をどこにやったのかはわからないが,たぶん我々の負傷兵に寄付したようだ。

2005/11/27 in  | posted by gen

EntryPrevious | Main | EntryNext



コメント



コメントしてください