バルチック艦隊技術将校,ポリトゥスキーの日記

12月13日

依然としてここに碇泊中である。強く警戒しながらここにいる。探海灯は周囲の海を隈なく探照している。
ここには我が艦隊と艦首を並べ2隻の島嶼巡航船が停泊しているが,これは英国船である。地図を開いてどこをみても,たとえ小さくとも英国の領地が見えないところはないということには驚かざるを得ない。このアングルベクウェンも前に英国領であったものを,後年ドイツにゆずったのだが,それでも英国はまだ2つの島嶼を領有している。

いままでに各港の地方官で(ある地方では表面だけではあったが)我が艦隊に妨害を与えなかった者はいなかった。アングルベクウェンは我が艦隊が入港したはじめてのドイツ港である。ここの地方官ははなはだ親切である。この港の衛守司令官は,自分は外交官ではないので,おおやけにはロシア艦隊の来航を知らないことになっており,そっと碇泊しているのであれば自分の目には触れない,と言った。
そう言えば私も忘れていたのだが,デンマークでも妨害はされなかった。しかしデンマークにいた者の話では,デンマークの人々はどちらかといえばロシアに対してよりも日本に対して同情しているということであった。同国の政府は致し方ないであろう。ロシアに扶助を与える方であったからである。しかしドイツ人はまったく違う。政府も人民も,ともに我が国に同情をもっている。今後のことはわからないが,いままでは別にドイツ人を非難する理由は何もない。
私たちはまだ投錨している。いつまでここにいるのかはわからない。

陸上から英字新聞が届いた(ケープタウン刊行)。新しい情報はみな悲しむべきことだけである。クロパトキンは依然としてその位置にある。新聞の報道によれば,クロパトキンは遼陽の戦闘後に3万7千の補充を得たとのことであったが,ほんとうにこんなに少ないのだろうか。第二軍の司令長官はハルビンに着いたばかりという。これはひとつの軍がまだ機能していないことを意味する。また,カウルバールス将軍が第三軍司令長官に任命されたことを知った。カウルバールス将軍ははなはだ無能な将軍との噂がある。旅順では,日本軍が全港湾の死活の運命を制するほどの,どれかの山地を奪取した。湾内で砲撃することは無益なため,至急出航の準備をするとのことであった(長村注:12月5日に二〇三高地を墜としたことを言っているのであろう。ただこの後,児玉参謀長が二〇三高地越えで榴弾砲による旅順艦隊攻撃を命じ,数日のうちにロシア戦艦,巡洋艦などを撃沈させた情報は入っていなかったものと推測される)。これらは英字新聞の報道である。これらすべてが悲痛なことだけである。ロシア軍はついにここまで来てしまったのか。

郵便物をもって上陸した士官などの話によれば,居住民は10数名のドイツ人と他のヨーロッパ人に過ぎないという。我が士官たちは,ドイツが内乱を鎮めるためにヨーロッパから輸送されてきた軍隊を見た。この軍隊は1,200人である。ドイツの将校の中にロシア語を話せる者が2人おり,ひとりは非常にうまく話す。
ここでは一般に英国人に対しては悪感情を持っていると聞いた。英国人は,いまここにドイツ人が鎮定に来た反乱民に武器を供給しているという。かれらは至るところにすべてのことに対して破壊を行おうとしているのである。
風は依然として激しい。いまマライヤおよびメテオルから,両艦はかなり機関を破損して他艦の助けがなければ自分では操縦ができないという連絡が無線電信によってもたらされた。
カムチャツカも補助を必要としているのであるが,未だこれに着手することができない。

2005/12/13 in  | posted by gen

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