バルチック艦隊技術将校,ポリトゥスキーの日記

12月16日

カムチァツカは石炭船から英字新聞を手に入れた。この新聞の伝えるところによれば,地中海航行の我が艦隊がスエズ海峡を通過する際に,紅海あるいはスエズ付近で日本艦隊に襲撃され,我が艦隊が損害を被ったという。これはもちろん新聞の誤報であろう。
ローランドは昨日外洋に出たが,これはコレラで死亡した一水兵の葬送のためであった。
いま艦隊は一切の灯火を消し,真っ暗にして航行するよう命令が出された。前にも灯火を消したことがあるがまったくすべてを消したのではなかった。艦船通行にもっとも必要とする明りも止められたが,いまはこの明りも必要とはしていない。
明朝にここから出航することが決定された。
我々はこれからマダガスカルに到着するまでの航海途上にどのような偶然に遭遇するのか,その偶然のできごとがどんなものなのかは想像することもできない。
今日は終日車を動かす栗ネズミのようにグルグル奔走した。ボロジノアリョールアレキサンドルなどの諸艦に行ったのである。ボロジノには例のように他の艦より長く留まった。ボロジノの士官の一人は石炭庫の穴に落ちて足を負傷し,ベッドに寝ている。ボロジノに行くと,いつも私に対する乗組員の親切を感じないことはない。幾度かこのことを記したが,ボロジノに行くときは喜び勇んで出かけている。
各艦の汽艇が総がかりでアリョールに錨と錨鎖の捜索に取り掛かった。今日の3時に聞いてみると再三,潜水夫を潜らせたという。

2005/12/16 in  | posted by gen

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