バルチック艦隊技術将校,ポリトゥスキーの日記

12月29日

セントマリー島付近にいる。陸上からの通信を受け取ったが,それは公言することが憚られるような内容であった。旅順艦隊がことごとく殲滅されたのである。グロムボイは破壊された。
クロパトキンは依然として奉天にとどまって兵を閲している。第三艦隊はリバウを出航したか,あるいは出航の準備をしているというのだが,果たして本当だろうか。
こうしたことはあなたが想像する以上に侮辱以外の何物でもない。どこをみても失敗と醜怪と,あるいは妄愚と不平不和のみではないか。もちろんあなたはペテルブルグにいるので,すべてを耳にしているだろう。しかしここでは何も知らずにいて,一度にすべてを知ることになり,そのためにすべての事柄を一緒に並べて考え,自ら戦慄せざるを得ないのである。周囲はみな暗黒でただひとつの光明の影さえもないのである。我々の事業は不利不良である。非常に不良である。
ローランドは我々の錨地から100露里離れたところのタマタブ市に赴いた。ケープタウンからは病院船アリョールが新聞を持ってきた。アリョールの士官などの話では,ケープタウンには市中でかなりロシア語に通じている者がおり,これらの人々はロシアから逃れてきたユダヤ人であるとのことである。この街にはユダヤ人が13,000余りも住んでいる。彼らの多くは兵役の義務を免れるためにロシアから逃れてくるのである。ユダヤ人たちはアリョールを見ようと集まってきたので,警官に頼んで追い払った。
タマタブ市に赴いたローランドは電報でマライヤが着いたことを知らせてきた。ここにスイスの国旗を掲げたスクーナ船が来たが,海のない国の船を見るというのは,いかにも奇怪なことではないか。
マライヤは来た。艦隊からの通信にはしばしば信じられない情報もある。たとえば,今日タマタブから我々の艦隊がドルバン付近で石炭を積み込んだという電報が来た。これはまったくの虚報である。このような電報を発信するのは,英国人を騒がせ,かれらに調べさせようとする目的から出たものである。一言で言えば,英国人が中立を犯していることを自ら弁護するためである。
アリョールはケープタウンからノーオエ・ウレミア新聞およびビルゼーウィア・ウェドモスチ新聞を持ってきた。私たちはむさぼるようにこれを読んだ。

我々の艦隊はマダガスカル島とセントマリー島の間に停泊している。今日,セントマリーの陸上からこの島の一方の海岸にいずれかの汽船二隻が停泊していることを信号によって知った。我々の艦隊に電報を発したのはこの汽船ではないか。これは日本の巡洋艦であろうと思われる。
ローランドが心配である。ローランドは帰ってきていないのである。もしここに日本の巡洋艦が碇泊していたとすれば,彼らはローランドを拿捕し,これを撃沈することはたやすい。
スエズを通ってきた艦隊はマダガスカルのモザンビーク海峡(西岸)に碇泊すると思われるが,まだこの艦隊については何らの情報も持っていない。

2005/12/29 in  | posted by gen

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