バルチック艦隊技術将校,ポリトゥスキーの日記

1月23日

スワロフの士官室には大きなピアノがあるが,機械で自動演奏する。艦内には手で演奏できる者は一人もいないのである。今日,スワロフに他艦から一人の水先案内人が移乗して来たのだが,この水先案内はなかなかの音楽家で,彼のピアノ演奏を聴いた後,ダンスなどを始めた。士官の中にはケクヨクやカリマンスカヤ(舞踏の名前)などをする者もいたが,おかしなものであった。というのも,これらのダンスをするのに,別々にいろいろな衣装を着替えたのである。これらはみな退屈を紛らわせるための遊びであった。

このマダガスカルに停泊してからすでに1ヶ月近くになった。その間,平凡な毎日を過ごし,他になすべきこともなく,みな退屈して次第に馬鹿になっていくのも当然である。たまには慰みに闘犬を行い,みな熱心に犬が怒って噛み合うのを,口笛を鳴らして励ますなどのことをして遊んだ。

マダガスカル島には怪しい人物がたくさんいる。ノシベにはロシア語に通じた怪しい人物が,ロシア語に通じていることを挙げて,スワロフその他の艦船に食料の請負を行ない艦船のために尽力するとの申し込みをしてきた。この人物はタマタフ市を徘徊していたらしいが,別にこれという当てもなく当地に来たとのことである。彼は粗末な服を纏い,頭髪を長くして一見スラブ人のようである。

今夜,一隻の郵便船がヨーロッパに向けて出航するとのことだ。
ユマンゴから1通の暗号通信を得た。しかし例によって何らの快報も得られなかった。艦隊の進退はまったく未定だ。ロシアに帰艦すべきか,どこか他の地に寄泊すべきか,あるいは極東に航進すべきか,誰も何も知る者はいない。この曖昧さは私だけでなく,すべての者を苦悶させている。

2006/01/23 in  | posted by gen

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