バルチック艦隊技術将校,ポリトゥスキーの日記

1月27日

これから戦艦アリョールに行こうと思う。明後日には陸に上がる予定である。天気はよいとはいっても,雨が降らないという程度のことだ。オレーグが一隻の汽船を拿捕したという通信があった。その汽船は日本に向けて野砲260門を輸送しようとするとのことだが信じがたい話だ。私の知るところでは,この汽船はアフリカを回航する汽船で,ここで我が補助巡洋艦を待っているのである。
上陸して喫茶店に入り,トランプをした。170フランすなわち64ルーブリほど勝った。夜8時に帰艦し,食事に遅れたので私室で食べた。陸上では間諜ではないかと疑われた人物を目撃した。その男はロシア人に酷似した風貌で,芸術家のように頭髪を伸ばしていた。
夜11時。ドイツ人は実に驚くべき現実家である。自国の士官を石炭船に乗り込ませ,その汽船の副艦長を務めさせている。これらの士官たちは我が艦隊の航海の状況を観察し,自国海軍の利益に資するために遣わされているのである。ロシア人には到底企画することができないことだ。こうしてロシアは大きな損失を被っているのである。我が国には,まだ良質の海軍も陸軍も存在しない。これはけっして兵卒の如何によるものではなく,乗員の編成,恒久の軍備,先見の明などの問題である。
喫茶店ではフランス,英国,ロシア,イタリア,オーストリアなどの人々がいて,大きな金を掛けて遊んでいた。一人の大尉は5000フラン勝ち,またこれを負けた。

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(つづき)
日々,オレーグイズムード,その他の駆逐艦の来着を待っている。これらの諸艦はノシベ付近にいるとのことであるが,通信員の電報であって公電はひとつも入ってこない。ロシアでは万事この調子である。
来月2日にヨーロッパから郵便が到着する。当地からの郵便船は8日に出航予定である。ここで諸艦の到着を待っているが,マダガスカルに長く停泊するだろうという説は確実なようである。我々がここに到着して,明日でちょうど1ヶ月になる。実に光陰矢のごとしだ。この1ヶ月の時間は無為に過ぎ,戻ることはない。この先,ここに長く碇泊するかどうかもわからない。いつかはこの錨地の碇泊を終えなければならないが,ペテルブルグの当局は,いったい何を考えているのであろう。
この地の噂によれば,かのクラド中佐の論文が出た後,ロシアの一般社会では我が艦隊をロシアに召還することを要求しているとのことである。我が艦隊が航進すべきか否か,また前に進むべきか否か,この二つに一つを今日までこのように決することがなぜできないのか。この艦隊に要した費用も莫大である。我が艦隊は数週間ノシベに投錨しているが,これによって艦隊は少しも良くならず,また優勢にもなっていない。かえって百害あって一利なしである。
結局は,我々がここに空しく時間を浪費している間に日本は十分にその汽船と汽艇を修理する余裕ができた。日本は我が艦隊を迎撃する準備ができる。我々には根拠地があるわけではない。ただ,望外の幸運を頼みにしているだけではないか。我が艦隊を派遣した当初にどのような計算考慮をしたのだろう。
我が艦隊はロシアにとって最後の力である。もしこの艦隊が殲滅されたなら,我が国の海軍はこれで全滅するのである。
このように思っているのは私だけではない。みながそう思っている。これらのことがすべて艦隊の士気を鼓舞することにつながるとは思えない。陸軍でも大方このような状況である。ロシアでは万事不都合だけだ。さらにこれに加えて内乱騒擾もある。いったいこれからどうなっていくのだろう。

2006/01/27 in  | posted by gen

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