バルチック艦隊技術将校,ポリトゥスキーの日記

2月19日

今日は提督が病気のために朝のお茶にも出てこられないのを幸いに9時まで寝ていた。それからまた寝て,今度はさらに5時まで寝た。日中は暑さで安眠できないのが普通であるが,今日はそんなに暑いというほどではなかった。
今日は奉神礼の祈祷があった。
この土地に新たに商店を開いた一人のフランス人が艦に来訪し,日本間諜のことを話したが,これは信ずるに足るものではなかった。たぶん気を引こうとしてのものだったと思われる。概してフランス人にはこのような心醜い人物が少なくない。
提督の病気はよくなって,午餐に臨席された。

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今日は陸上で艦隊の楽隊が演奏した。天気はよくなかったが多くの士官が上陸した。
昨夜はずっと雨が降り,きょうもまた雨である。夜中に明り窓から雨が吹き込み,私の足をひどくぬらした。そのために安眠を妨げられ,すぐに窓を閉めて一睡した。
この地の郵便局の官吏には必要なロシア語を勉強する者もいて,たまに郵便物にロシア語の文字でペテルブルグと記してくるものもある。私たちがさらにこの地に停泊を続ければ,ノシベは完全にロシア化されてしまうだろう。
マユンゴからフランスの駆逐艦が齎した電報によって,モスクワの軍務知事が暗殺されたことと2月15日(ロシア暦の2月2日)に第三艦隊がリバウを出航したことを知った。私たちはここで碇泊を続け,第三艦隊の来着を待つことになるのではないか。第三艦隊がこのノシベまで来るにはどれだけの日時を要するのか。もし私たちがこの有名な第三艦隊の到着を待つとしたら実に意外といわざるを得ない。ノシベの錨地は我が第二艦隊のために,諸艦にとってははなはだ有害な錨地となっている。艦船の底と舷側には貝殻と海草が付着し,そのために艦船の航走力が減って石炭の消費量を増大させている。貝殻と海草の除去作業はドックでなければできないが,私たちには艦船を入れるべきドックがあるはずもなく,潜水夫に艦艇を掃除させるには非常に長い日時を要し,かつ十分な成果は期待できない。
しかし艦底に海草類を付着させるのはきわめて有害であり,艦船はこれによってその性能の大部分を失ってしまうのである。船舶にとって貝殻や海草の付着が有害なのは,南洋や極東を往復する商船が6ヶ月に一度は莫大な費用を要することを意とせずドックに入り,外側の掃除を行うのをみても明らかである。
私たちはどんな結果を迎えるのだろう。貝殻や海草を付着させた艦船を率いて極東に向かおうとしているのだ。日本人は掃除修理の行き届いた艦船で我々を迎え撃とうとしているのではないか。我が艦船は大航海をしてようやくそこに着くというのに,日本艦隊はその港湾から出動してくるのではないか。
さらに日本にとって有利なのは,旅順港内に沈没した我が艦船を引き揚げて,これに十分な修理を加え旧艦名をつけたまま我々に対戦することである。彼らはこれによってその海軍を優勢に導くのに較べて,我がロシアの恥辱はどんなものになるのか。あなたも試しにボルターワレトウィサンなどの艦がスワロフに向けて砲撃するところを想像してほしい。こういうことを言うこと自体耐えられないことであるが,我が海軍を滅ぼすのはいったい誰なのか。この日本人――我が勇敢なる海軍軍人(侮辱的な意味で)がいつも侮って「猿」と名付けた人民であるが,猿と言って軽蔑し,傲慢に振舞っていたためにロシアは非常に大きな打撃を蒙った。
ああ私はまたも古い繰言を言ってしまった。むしろ言わない方がよい。言っても何の益もない。ただ自分の気を悪くするだけだ。
明後日の火曜日には演習で外洋に出る予定だ。

2006/02/19 in  | posted by gen

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