バルチック艦隊技術将校,ポリトゥスキーの日記

2月25日

フランスの新聞の影響で和議締結の噂が盛んである。如何にしても平和を締結し,莫大な償金を払ってでもこれをすべきであるという説もある。我がロシアはついに賠償金を払わざるを得ない状況に立ち至ったのか。戦争は完全に敗軍となるのだろうか。私はこれを信じたくはない。我々が招いた恥辱はいままでで十分なほどだ。その終局までもが恥辱に満ちたものになるのか。
如何なる代償を払ってでも平和を締結せざるを得ないという言葉は,第二者の側(ロシア人)からも聞かれるようになった。はたしてどんな精神なのか。このような恥辱極まりないことを公言し,かつこれを弁護しているのだ。このような考えを持つ人たちに善事を期待できるだろうか。実に困難な時期だ。戦争もロシア内地も,万事悪運が満ちている。この結果ははたしてどうなるのだろう。善美な終局はとても期待できない。

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(続き)
今朝,手紙を書くのを妨げられた。石炭運送船ゲルマンの破損修繕のために出張しなければならなくなったのだ。ゲルマンからさらにオスラービアに行った。
不愉快な事件が起こった。スワロフの舵の鉄板が少し剥落したというのだ。これは偶然の発見である。もしこれが本当ならば非常な大仕事になる潜水工事をしなければならない。しかも日数を要するものである。この破損を発見した士官にはまだ会っていない。彼を呼んで2時間も待ち,そのために上陸もできなかった。それで電報と手紙の投函を他人に依頼した。
私は舵の破損について思えば思うほどはなはだ疑わしい。鉄板が剥落したかもしれないが,ほんとうに舵のものかどうかはわからない。私がいま考えている程度であれば,これは卵の殻ぐらいに過ぎない。私自身が潜水服を着て実際に調べるべきかとさえ思う。しかしアブラクシンのときに潜水したときのことを思うと,よほどの必要に迫られなければ水中には入らないつもりである。
3時,私の想像は当たった。スワロフの舵は少しも破損していなかったのだ。鉄板は窓の僅かの部分が剥落しただけだった。この修理はとくに手間がかかるというほどのものではない。潜水技術専門の士官を潜水させた。
今日はひどく運の悪い日であった。まず病院船アリョールで死亡した水兵の葬式があった。つぎにオスラービアのひとりの水兵が,その足をカッターと本艦との舷側に挟んでしまって足を折り,とうとう死んでしまった。夕刻にはドンスコイの水兵が溺死した。このような事件はいままで経験したことがない。
ボロジノで指をもぎ取られた水兵を病院船アリョールに移乗させたことを最近知った。重症ではあるが命に別状はないとのことだ。30分ほど前に一人の士官がスワロフの舷側から墜落したが本艦に救助された。シャンペンに酔ったのが原因という。
今夜,幕僚上席主理に面会した。ダムボフにおいて巻煙草千本を15ルーブリで販売するという。非常に高価だが致し方ない。この価格でも買えれば良しとしなければならない。選ぶこともせずに買い求めた。
いまから寝ることにする。明日の朝はジェムチューグに出張せざるを得ないので6時に起こすように命じた。
今日,シャンペンを入れた箱数個がスワロフに運ばれたが,数人の水兵はその箱一個を掠め取って暖炉の中に隠した。しかし彼らは逮捕された。もしこれが公開されて軍法会議にかけられれば厳罰に処せられるだろう。
陸上に喫茶倶楽部が設けられたという。
またも我が艦隊は第三艦隊と合流する前にジプーチに行くことになる,という噂が立った(もちろん信じるべきものではないが)。

2006/02/25 in  | posted by gen

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