バルチック艦隊技術将校,ポリトゥスキーの日記

2月1日

上陸した。現在は陸上との交通を禁じられているので郵便発送の機会を利用して上陸する以外にないのである。ここからすぐにスンダ湾に向けて出航するかもしれず,郵便が出せなくなるかもしれない。
今日はまもなく射撃演習に出ることになっており,巡洋艦は錨を上げ始めた。帰航は夜になるであろう。
あなたは私の書面の判読に苦労しているのではないか。これらの書面はみな寸暇を利用して断続の如何にかかわらず書いている。きちっと読もうとするとわからないかもしれない。とくに数枚にわたる日誌を一度に手にすることもあると思うが,これを読むのは一層難しいと思う。できるだけ順を追って読んでほしい。

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夜8時ごろに抜錨して外洋に出た。昨日の演習で一弾がドンスコイに飛んできてブリッジに落ちたが,砲弾は僅かに触れただけで遠く飛んでいったという。一人の死傷者も出すことがなかったのは幸いであった。
5時ごろにノシベに帰航した。今日はどの艦も同士討ちになるような失策はなかった。
間諜と疑われた者から提督は書面を入手した。彼は間諜に疑われたありもしない謗りについて弁明した。彼は一二の事件を記して彼がウラルに赴いた際,この艦のある士官が彼を毒殺しようとしたのだと言う。
また当地の検事が彼にノシベからの退去を勧めたとのことを記して,結局金銭を要求した。この者のことを訴えたのは彼とともに某船に赴いた郵便配達夫であった。郵便配達夫の言によれば,この間諜と疑われた男は,どこに行ったのか船内で見失うことがあり,あるときは乗員などに混じって同じテーブルを囲み,食事をしていることさえあったという。また彼はロシア語ができることを士官などには秘密にしていたという。間諜が自由に艦内に入り込んだとは実に驚くべきことだ。実に奇跡である。
日本の艦隊ではこのようなことはまったくないだろう。我が艦隊にこのようなことがあるのはみな我々が公言できないある事情を反映している。
あなたは我が艦隊に如何なる人物がいるかを想像することはできないかもしれない。我々がまだロシアを出航する前,我が艦隊に乗り込むことを願い出たものがいた。彼はもし艦隊乗組みが許されなければ撃つと脅した。その許諾の返事の聞く日まで申し込み,結局許可されて下士官に採用された。その後彼は未成年者であることがわかったが,すでに如何ともし難く,いまも艦隊にとどまっている。

ある事情にてらして考えると,我が艦隊は簡単には当地を出航しないように思われる。陸上からの通信によればクロパトキン将軍は進撃に移ったとのことである。ただし進撃した云々は何回も聞いている。今回の報も信ずるに足るものではない。

2006/02/01 in  | posted by gen

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