バルチック艦隊技術将校,ポリトゥスキーの日記

2月4日

ときどきフランスのある新聞に,スワロフは喜望岬付近を回航中に行方不明になったというような記事をみることがある。この虚報は真面目な新聞が掲げたものである。ロシアの騒動を伝えるさまざまな電報の中でも,このような虚報が少なくない。たしかに騒擾があることには違いないが,新聞紙上で書かれているほどにはひどくはない。ロシアには国内の騒擾がなくとも非常に困難なときである。ペテルスブルグの秩序は回復したとの報もあるが,喜ぶべきことである。
フランス人の言によれば,オレーグはこの2日にチブーサを出航したという。ここに到着するまでには1週間は掛かる。

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いま士官室でメニシコフがピリレフに宛てた答弁書を読んだ。人々はメニシコフを憤慨して,「彼はなぜこのように我が海軍を誹謗するのか,誰からこのようなことを言う権能を与えられたというのか,彼は海軍に奉職していながら少しも海軍のことを知らない。何でこのようなことを言うことができるのか」,と絶叫する様子が想像できる。しかしそれは愚も甚だしいというべきだ。彼ら海軍軍人は日本の海軍に対していささかの損害も与え得ず,日本海軍に較べて二倍も優秀な我が海軍を不名誉と侮辱と無益に滅ぼしてしまったにもかかわらず,まだ議論しようというのか。我が海軍より以上に恥ずかしい行動をとるものが他にいるのだろうか。
世界開闢以来,このような例を他に聞かない。この慙愧に耐えない恥辱は言語道断だ。彼らは破廉恥厚顔にも,なぜ他人の非難に対してそれを非難する権利があるというのか。我々海軍軍人のほかに誰も何も理解せずなどとどうして広言することができるのだろう。
私は今日また奇怪なことを言う者がいるということを聞いた。ある海軍軍人は「何とばかばかしいことか。陸軍にはすでに行賞があるのに旅順の海軍軍人に何の賞も与えないのは憤慨に堪えない」と言っているそうだ。
私はあえて誹謗しようとする者ではなく,話のままを伝えようとしているだけなのだが,私はこの言葉を聞いて驚いた。これは言語に絶する話である。その分限も心得ない愚鈍さは何なのか。自負放漫,その厚顔ははなはだしい。ロシアは彼ら海軍軍人を見れば問いを発して「ロシア人民の汗と血をもって建造した我が海軍はどこにあるのか」と問うべきだ。彼ら海軍軍人は果たして何事を為したのか。彼らは敵に損害を与えたのか,我が祖国に利益を与えたのか,ロシアの名誉を高く発動したか。
ああ,我が海軍軍人にはすでにこの問いを発することもできない。かれらは技術のことを技術者以上に知っており,法律上のことを法学者よりもよく知っている。彼らが海軍省を設けたのは,まさに自分のためであった。
彼らは半神のようであって,その他の者は下等の賤民だ。彼らは名誉勲章尊栄富貴,その他あらゆるものを専有しながら,海軍のことに関してはまったく無知無能だ。彼らは海軍にひとつも準備することをしていない。彼らが職を奉じているのは軍事のためではない。海軍は生活上の幸福を得るひとつの方法でしかない。またこれによって他人を誹議し,自慢して「我らは海軍軍人である」と高言する方法であるにすぎない。これは実に悲しむべきことに違いないが,この事実をいかにすべきだろう。
私は以前にもあなたにこのことを言った記憶がある。今回,この航海でますます前の見解が正しかったのを確かめた。しかし国は不幸にも彼ら海軍軍人に望みを託している。
メニシコフは個人的には好まない評論家であるが,その海軍に関する論評についてはメニシコフにもクラド大佐にもむしろ感謝しなければならない。これによってロシアは多少なりとも尊貴な海軍の腐敗した現状を知ることができるからだ。
祈祷所に行こうとして支度しているところにあなたからの電報を受け取った。非常に嬉しい。十数日間返事を貰えなかったので,その喜びは一層大きい。
今日,音楽を演奏するために楽隊を上陸させた。士官などはテニスをして遊び,県知事やその令夫人なども交わって遊んだ。
陸上で悲しむべきことがあった。一人の水兵が準士官を殴ったのだ。

2006/02/04 in  | posted by gen

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