バルチック艦隊技術将校,ポリトゥスキーの日記

3月11日

急いで上陸して郵券と煙草を買い,郵便を投函してすぐに帰艦した。
土地の者はその働き振りを示して横着を決め込んでいる。ヨーロッパ人は概して土地の人々に対してはあまり礼を重んじない。土地の人たちは私が手に包みを携えているのを見ると,大勢駆け寄ってきて店頭に集まった。ヨーロッパ人の店員はあたかも犬を追い払うかのように土足で彼らを追いやった。しかし簡単には去っていかなかった。
郵便局から我が艦隊にこの地方から発送された郵便と電報を配達された。その郵便の中にはキールから我が提督に宛てたハガキがあった。このハガキの中には,一人のドイツ人が,例の北海における漁船砲撃事件のことを書いてロジェストウェンスキーを嘲笑し,帰還すべきことを勧告し,「ましてや,卿等のためにはウォッカが貯蔵されているのだから,云々」と言っているものがあった。

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3時に無線電信でイルツイシから連絡を受けた。8時に湾内に入るが郵便物は一つも持ってこないという。郵便物を送ることなど簡単なことであるにもかかわらず,ロシア海軍参謀部は実に不都合極まりないことに,これを行わないのだ。イルツイシはジプーチに約1ヶ月も碇泊していた。みな異口同音に参謀部を非難したが,別に致し方ない。参謀部長自らはギンスブルグ商会の手を経て艦隊にいるその子息に手紙を送ってきた。
ひとつの郵便物発送のような単純な仕事でさえ満足にできないわが国が,どうして日本と戦争などできるのか。彼等参謀部の不親切のために,また一指をも動かす能力がないために,我々はすでに2ヶ月半も家族から一言の音信をも受けることができないのだ。
軍隊に家族の音信を得させるのは士気の発揚にもっとも必要であるのに,そのようなこともできない者が,日本のような強敵とどこで戦おうというのか。私はすでにわが国の秩序がどの程度かを知っているので,イルツイシには別に望みを抱かない。しかし多くの人たちは同船が多くの郵便物を持ってくると信じ,そのときにはどんなに嬉しいことだろうと思っている。
イルツイシの上官の一人が発狂し,スエズからロシアに帰還させられたということだ。明日は同船に出張する。またボロジノにも出張しなければならない。

2006/03/11 in  | posted by gen

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