バルチック艦隊技術将校,ポリトゥスキーの日記

3月12日

郵便物事件で多くの人々は参謀部の処置に憤慨し,艦隊の各士官は各艦一致して,オデッサのギンスプールグ商会を通じて親戚知人に手紙を送ってほしいという広告を依頼する旨の電報をノーオエウレミヤに打とうと話し合った。ギンスプールグ商会は我が艦隊の戦争史上に如何なる働きをするのかをあなたに話すこともあるだろう。ギンスプールグ商会がなかったらまったくなにごとをも為すことができまい。この商会は我々に飲ませ,かつ食べさせ,また全艦隊に一切の軍需品を供給しているのだ(訳者注:ギンスプールグという人はロシアのユダヤ人で明治10年ごろ横浜に来て,わずか3ドルで人に雇われ卑しい仕事に就いたが,次第に貯金をして多少の資金を得て商売を始め,ロシア艦隊が来航するたびに商売をするようになってついには御用商人となって巨万の富を築いた人である。現在はオデッサをはじめ極東の重要な港湾に支店を設ける大商人である。ロシアでもギンスプールグ商会といえば屈指の豪商である)。

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奉天はついに日本の手に堕ち,ロシア軍の鉄道は破壊され,ロシア軍は5万の死傷者を出し,捕虜になった者も5万に達するとの情報が入った。まことに畏怖すべき不幸である。現状を考えれば,戦争は完全に我が軍の敗北である。ウラジオが包囲されるか,あるいは奪取されるかの報がくるのではないかと毎日思っている。
我が艦隊はどこに行こうというのか。我が艦隊は嫌悪に耐えない艦隊であるが,とにかく唯一の拠り所である。
ああ不運なロシアよ,この艱難はいつ終わるのか。一難去ればまた一難が襲ってくるのは汝の運命である。

2006/03/12 in  | posted by gen

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