バルチック艦隊技術将校,ポリトゥスキーの日記

3月29日(朝)

昨夜は服を着たまま客室の長椅子で寝たが,よく眠れた。
今日は石炭積み込みが見合わされ,1日まで延期になった。昨夜から赤道付近を通過して少し北方に進んだ。一見したところ実に奇観である。
昨日は南半球にいて,そこは秋であった。今日は北半球に進んで,すでに秋ではなくここは春である。冬を通り過ぎてしまったのだ。
長いこと駆逐艦ペズーブレーチヌイはその舵のことについて電信を送ってきた。おそらく重大なことが起きているようだ。昨日の報告と今日の上申とを対照したが,その損傷の如何を明らかにすることはできなかった。艦隊は今朝からずっと止まらずにゆっくりと進行している。たぶんその停船中にみな機関の不完全な点を修理したのだろう。

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我々はいかなることに遭遇するのであろうか。ボカチールは修繕をほぼ終えたが,それに11ヶ月を要したとのことだ。この船はドックにあり,しかもロシアにとっては極東唯一のドックに入っている。我が艦隊が戦争してウラジオに入る際に,その破損艦船をどこに置くのだろう。修繕中のボカチールを再びドックから出すのか。そうしたらこの艦は再び沈没するのを免れないのではないのか。実に進退極まれることにはならないだろうか。我が艦隊が全滅すればロシア海軍も滅亡するのではないか。もちろん運命には意外なこともないことはないが,我々はそれに期待することはできない。
日本人はワリヤーグを引き揚げたとの情報もある。たぶんその修理もすでに終えているだろう。我々は我が軍艦が敵艦隊の列に加わって来襲するのに会うことになる。実に奇なる出会いではないか。我が軍艦が我が軍に対して戦おうとするのである。その恥辱はいかばかりか。
ドンスコイは地平線上に煙突から飛散するような火光を偶然見つけたとの報告をしてきた。我々を追跡するものなのだろうか。もちろんだ。我が艦隊はマラッカ海峡を通過する。この海峡の延長は1000露里である。この海峡通過の際に意外なできごとに遭遇するかもしれない。海峡を出たとたんに東郷の全艦隊に出会うこともありえる。日本艦隊の中にはロシア人が旅順で爆沈しなかった艦船もあるだろう。私は我が艦隊の勝利を信じない。私が,もし日本人の立場に立てば,戦争によって自分の軍艦を損傷する冒険は犯さず,第二艦隊を妨げずにすべてこれをウラジオに入らせる。こうしてウラジオを第二の旅順にしてしまうことはそう難しいことではない。ウラジオを封鎖することは簡単である(もしまだ封鎖されていないとすれば)。また要塞も堅固とはいえない。軍需品の貯蔵,工場,ドックも不足している。全ての要素が日本に有利である。日本の成功はほとんど保障されているといってよいだろう。

2006/03/29 in  | posted by gen

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