バルチック艦隊技術将校,ポリトゥスキーの日記

3月31日

天気は荒れ始めた。晴雨計の針は下がっている。暴風雨にならなければよいが。昨夜1時ごろに強風が吹き,そのころから波浪はますます激しくなった。
風は次第に強くなって強い雨も加わってきた。波はますます高くなった。みなこれほどまで激しくなるとは思わなかったので明かり窓はどこも開けておいたため,いたるところで海水が浸入した。2時ごろには怒涛は山のように高くなって暴風雨になった。遮るものがないところでは立っていることができず,吹き倒されるだろう。風は激浪の飛沫を吹き,海は一面が白くなった。その雨の激しさのために海はあたかも霧で覆われたようになって近くにいる艦船も確認することができない状態である。

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スワロフは風のために3度の傾度に傾いて,その状態で止まった。
暴風はやんだ。しかし風はまだ強く雨も降っている。浪も高いが,これからさらに高くなるかもしれない。強風は幸いに追風である。今日の烈風は喜望峰を回るときの風よりは弱く,波浪もそのときよりも巨大ではない。これ以上には強くならないだろう。我々はこれから無風帯と称される緯度を通過することになるが,無風はありがたい。いまの季節にここに風がないことは確かである。風位の方向線や風位の図なども確かにこのことを示している。
駆逐艦のことを想像して,思わず慄然たらざるを得ない。駆逐艦はみな曳船で航行している。彼らはどうしているだろう。私は非常に心配している。彼らは大丈夫だろうか。風を止ませたいものだ。まもなく日暮れであり,まったくの暗闇になる。いま駆逐艦はいかに操縦しているだろう。スワロフからは駆逐艦を見ることはできない。
降雨はまだ止まない。地平線上は濛々としている。海の光景はどうであろう。上甲板にでて見てみよう。明かり窓から見ても意味がないからだ。玻璃は波のために曇っている。風は静かになったが波浪はまだ高い。駆逐艦ボードルイは第二桅を折られた。グロムスキーは曳船の綱を切断されて自らの蒸気で操縦している。

過日,石炭積み込みの際にシソイは一隻の汽艇を沈没させた。しかし乗員はすべて救助された。汽艇は不注意にも浪に揺らされている戦闘艦に近づき,それに触れて沈没したとのことである。昨夜はテレックで一人の水兵が船倉に落ちて死んだという。
室内の暑さはひどい。明かり窓を開けることもできない。手拭を用意した。汗が流れて水を浴びせられたような状態である。今夜はどこに寝るべきだろう。士官室の温度もやはり高い。明日の朝,海が静かになり次第,すぐに石炭積み込みを行う。
グロムスキーの舵ははなはだ心配である。この艦の舵はまだ十分に固定されていない。もしかしたらはずれるかもしれない。そうなれば駆逐艦は操縦不能になるだろう。いま,この艦は自分の力で航行している。このような天候では曳船に頼ることはできない。この艦は,しかしいまのところは舵を保っている。

またも強風が雨を交えて吹き出した。海は荒れ始め,戦闘艦は緩やかに揺れている。しかし駆逐艦,巡洋艦はかなり揺れている。オレーグスワロフから見ることができないので,どのぐらいゆれているのかはわからない。艦隊はいままったく水中にある。どこをながめてもみな水だけである。水の上を航し,波浪は飛沫を打ち上げ,雨は篠つくように降り注ぎ,体は濡鼠のようになった。

2006/03/31 in  | posted by gen

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