バルチック艦隊技術将校,ポリトゥスキーの日記

4月14日

カムラン湾にいる。30時間も外洋にいて,いま湾内に入り始めたのである。
病院船アリョールはいまなお帰還せず,同じく石炭船も来航していない。彼らはもしかしたら日本人に拿捕されたのではないだろうか。昨日,戦艦は近くカムランに進んできた。漁船に乗っている多くの漁夫を見たが,なぜか一人も我が艦船には来ない。
今朝,我が戦闘艦の甲板上で飛び疲れた小鳥を捕まえた。金糸雀とのことであった。昨夜は非常に涼しく,寝巻きは汗で濡れることはなかった。こんなに涼しいことはしばらくぶりである。
我々はカムラン湾またはその附近で多くの時日を送るのが果たして効果があるのかどうかの問題を自然に心中に喚起せざるを得ない。日本が我が艦隊を攻撃するためにスンダ海峡に計画したことを,いまや別の場所に転移することになろう。日本人は万事を新たに施設準備する時間を持っている。日本人がスンダ海峡に計画したものが一度不成功に終わると,必ず我が艦隊を自国の沿岸で攻撃するもっとも便利な計画を速やかに準備するに違いない。
日本艦隊は沿岸において我々を攻撃すれば,破損艦船もすぐに修理することができるような多くの根拠地を持つことができるからである。このように考えれば,日本艦隊とは台湾を通過する前には遭遇しないものと思われる。もちろん,我が艦隊が長くカムラン湾に碇泊するようなことがあれば,事情はまたく違ってきて,日本艦隊はカムラン湾で我々を攻撃し,この湾を沈設水雷で封鎖することにならないとも限らない。そうなれば,カムラン湾は一変して厳然たる罠になる。日本人は実際我々より非常に狡猾だと思う。我々ロシア人ははなはだ淡白であり,物を言うにも馬鹿正直である。

続きを読む "4月14日"

いま錨を投じた。石炭船が来るのが見える。カムラン湾の海岸は石礫で,一帯には緑草が繁茂し,あるいは灰色の岩石または砂原である。砂の色は普通の色のものもあれば純白の砂もあり,黄色いものもあって不思議な感じがする。
カッターで巡航せざるを得ないが,天気はあまりよくない。
夜間,2隻の駆逐艦が来航する汽船を偵察するために出て行ったが,プレスチャーシチーベズーブレーチヌイの舷側に衝突して破損させてしまった。海上でこの2隻のロシア駆逐艦が互いに押し合ったのである。そのため修理が必要になった。ベズーブレーチヌイは舵を破損し,さらにひとつの機関は動かなくなった。
昨日駆逐艦で湾内に赴いた士官は,カムランに郵便電信局があり,さらに食料品も豊富で,サイゴンに鉄道を敷設途中との報告をした。
昨日当地において7日前に第三艦隊がジプーチを出航したとの電報に接した。またボルネオ島附近で日露両艦隊の激戦があったという電報もあった。このような虚報はただロシアにとって不安の念を抱かせるだけである。2週間前に,このカムランに2隻の日本巡洋艦が来航したとのことであるが,サイゴンから2隻の駆逐艦が来て,その巡洋艦にこの湾を去るべきことを要求したという。そしてその巡洋艦も去っていった。我々もまた,ここを退去することを要求されるかもしれない。しかし我々はここに長く碇泊するように思われる。
カムラン湾の外部地形とその湾口などは旅順を髣髴とさせる。願わくは実際に旅順の轍を踏まないことを。
いま石炭船から郵便物を持ってきた。

2006/04/14 in  | posted by gen

EntryPrevious | Main | EntryNext


コメント



コメントしてください