バルチック艦隊技術将校,ポリトゥスキーの日記

4月7日

昨夜は始終多くの汽船に会ったが,いずれも艦隊の航路を遠く避けて通過した。北海の漁汽船が通るたびに,それを探海灯で照らしたが,これは船砲撃事件の教訓が功を奏したということであろう。今日もたびたび汽船に会った。エンクイスト提督が,提督,艦長,士官など並びに水兵が12隻の水雷艇を率いて航行する汽船を見たと報告してきた。しかし日本人は白昼に自分の水雷艇を敵艦隊の前に露出するような愚かなことはしない。
イズムールドは汽船に鯨が従っていくのを見たと報告してきた。イズムールドはこれを潜航艇だと断言することはできないので鯨の類と想像したのである。

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我々はまもなく海峡の非常に狭い箇所に至る。ここは水路もはなはだ狭い。しかしこの水路を通過しなければ海峡を出ることができない。ここには潜航艇および我が艦隊の前に,他の船舶が触れないように敷設された沈設水雷があるかもしれない。水雷は臨機沈設して一定の予定時間を経過すれば自ら海底に沈下するように敷設することができる。我が艦隊に追尾してくる例の汽船は,この種の作業をすることができる。この汽船の行動はいかにも疑わしい。あるいは全速力で航行するかと思えば,あるいは停止し,あるいはその航路を変更する。この汽船はなぜ我が艦隊に付きまとうのか。あるいはその通過する後に沈設水雷を投下するのではないか。しかし意とするに足りない。もし幸いに我が艦隊が無事に水雷に触れずに通過すれば,その水雷は一定の時間後に海底に沈み,海峡は安全となって中立国の船舶が海峡を通るのに少しの支障もなくなる。みなこのように簡単にこの敷設を実施することができるのである。日本人は果たして我が艦隊に損害を与えることができるこの好機を空しくするだろうか。
今日,奉神礼の祈祷があった。しかし私は祈祷所に行かずにずっと寝床に臥していた。
マラッカ海峡を通過するにはまだ一夜を要する。夜は真の闇夜である。雨さえもが時折降って,そうでなくとも狭い眼界はますます狭くなった。

明朝4時ごろにはもっとも狭い水路を通過する。日中にシンガポールの沖を通り,6時ごろにはいよいよ南シナ海に入る。日本人がいると思われるナトラン群島のそばを通過するのである。彼ら日本人はマラッカ海峡において我が艦隊を攻撃するのか,あるいは何もしてこないのか。明晩にはこのことははっきりする。彼らは我が詭計に陥って,その注意と全力をスンダ海峡もしくはそれ以東に注いでいるのだろうか。あるいは彼ら日本人は我が艦隊がシナ海に入るまでは何事を為すことも欲していないのであろうか。
日本人は大胆勇敢である。なぜ彼らはその好機を見過ごすのか。もし今後20時間ないし22時間以内に何事もなければはなはだ狭いマラッカ海峡は悉く我が方に帰すことになる。
日中に細く狭く長いマレー半島の地形を見ることができた。私はいつまたふたたびこのアジアの陸地を見ることができるだろう。
今日,艦船の付近を奇妙な鳥が飛んでいるのを見た。これは鴎かあるいは他の鳥である。

2006/04/07 in  | posted by gen

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