ベスウブレーチヌイ修理の私の仕事はうまくいった。ダイオト港から駆逐艦ボードルイで艦隊に帰航したが,途中,石炭積み込みのためにホンコーヘに引き返す我が艦隊に出会った。外洋は波が高く石炭の積み込みが困難なためである。ここから明朝に出航することになるが実にわずらわしいことだ。我々は強制的に放逐されながら何回もここに現出する。ダイオト港は実際ホンコーヘの一部に過ぎず,ホンコーヘに広い海峡で連絡されている湾である。ダイオト湾は非常に風光明媚であり,海岸は断崖絶壁で草木が繁茂している。湾の一隅に難破したフランス砲艦が一隻横たわっていて,いまそれを取り壊している。陸岸には山羊,孔雀,猿,象,その他の動物がたいへん多い。
昨日はベスウブレーチヌイで午餐の饗応に与り,数時間甲板の上で談笑した。夜ははなはだ静かであった。の艦の乗員はみなたいへん睦まじく生活している。誕生日や命名日などには互いに贈答をし,時にはその贈り物がいかにも珍奇なものであることもあるという。この駆逐艦に一泊することを勧められたが辞退してカムチャツカに赴いた。カムチャツカでは私のために一室を備えてくれたが,私は空気が新鮮な甲板上のロングセーズに寝た。6時に私のために駆逐艦が遣わされた。カムチャツカで,スワロフに種々の手工作品を持っていくことを勧められたが持っていくには不便だったのでついに受け取らず,8時にカッターでスワロフに帰艦した。