バルチック艦隊技術将校,ポリトゥスキーの日記

5月2日

ネボガトフは26日ではなく28日にペナンに通過したとの電報があった。もしそれが確実であればネボガトフ艦隊の来着は今日ではなく4日になる。
朝,駆逐艦グロームキーペスウブレーチヌイボードルイに赴いた。旗艦の潜水技師を訪ねるためにスウェトラーナに行くために支度をしたが,彼の方からスワロフに来た。スワロフの多くの人はその手紙をロシアに差し立てるために託し,私もそのようにした。
戦闘艦アリョールにおいて牝牛の件で騒ぎが起きた。誰の仕業か牝牛の足を折った者がいて,その牛を屠って肉を乗員の食に充てた。しかし乗員等は斃死した牛の肉を食べさせられたとの流言を流したためにすぐに騒動になり,そのために提督自身が今朝アリョールに出張したのである。この艦では電雷の襲来が一時に来たときのように,艦長も将校も乗員もみなその襲撃を受けた。
アリョールの乗員は実に醜穢な人物が多く,水兵の中には罰金の処分を受けた者が非常に多い。私はかつてあなたにアリョールの乗員は水兵ではなく囚徒であると述べたことがあるのだが,あなたは覚えているだろうか。
戦闘艦アリョールに,この艦の沈没と二つの機関を破壊しようと試みた者があることを記憶している。乗員の放縦の多くは艦長の責任である。この艦の艦長はなぜか乗員のこのような行為を傍観し,かえって,もし士官の中に規律を厳粛にしようとする者があると,その士官を迫害するような風潮がある。規律などはもちろん,単なる秩序さえも存在しない。

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明日,この地にフランス軍艦が来訪するとの情報があった。これによって儀式的に次のような滑稽劇を演ずるとのことである。すなわち各戦闘艦とオレーグアウローラの2艦は朝6時半に抜錨して外洋に出航し,一方,運送船とその他の艦船は出航の状態を装って行動するのであるが,これらの艦船は実際に出航するのではなく,ネボガトフ艦隊の諸艦のためにある順序の位置を残して,ただその停泊の位置を変更するに過ぎないのである。しかしこれが局外中立と国際公法の滑稽劇でなくて何であろう。
我々は戦地に接近して中立国の海上に停泊していることすでに半月になっているではないか。もし大風襲来の虞がなければ諸艦はみなホンコーヘを出航できる。
あなたにこの手紙が届くのはたぶん艦隊がウラジオに到着するころになるだろう。もしこの手紙が日本人の手に落ちるようなことがあったとすればたいへん残念である。この手紙はエワではなく(エワの艦長は信用できない)タンボーフに託して差し立てることにしたい。戦争の状況を自ら想像してみると,砲戦はそれほど恐れるに足りない。砲戦は水雷攻撃ほどに滅亡的とはいえないからだ。砲弾は戦闘艦や巡洋艦を撃沈することはできないのである。しかし水雷は命中さえすれば容易に撃沈することができる。
錨を上げて外洋に出た。ホンコーヘを出る際にフランス巡洋艦に出会い,互いに礼砲を交換した。フランス巡洋艦は無線電信を発して,この艦には我々に送達するための郵便物を搭載しているので,その郵便物は湾内に残っているアルマーズに渡すということを伝えてきた。フランス巡洋艦は湾内に入り,我が諸艦はわずかにこの艦を離れて機関の運転を停止して漂泊した。
巡洋艦ギシアンは湾内から出て,我々はその場所に入る。実に滑稽である。そうだ。これは我々の利益のために演じられるのである。この滑稽は実にフランス提督の厚意で演じられるものである。しこの提督がいなければフランス政府ははなはだ無造作に我々を放逐するであろうし,それによってすべてが窮することになったに違いない。

2006/05/02 in ポリトゥスキーの日記 | posted by gen

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